胴
樹木の年輪は一年にひとつずつ、四季を通じた寒暖の変化によって作られます。しかも、育った地域の日照時間や気温、降雪量、水質などの環境によって出来方は随分と違ってきます。日照の関係もあり、同じ桐の木でも北面を向き、木の表皮により近いほうが木目が高密度に詰まって固く締まったよい材料です。もちろん、一本の桐の木の中に条件を満たす部位はごくわずか。最良の材料は一本の木につき、一面ほどしか取れないほどなのです。(胴の大きな17絃であればさらに少なくなります)この差が各商品の価格にも反映されてきます。桐のほかにも、角や足には、紅木、紫檀、花梨などの木材が使われます。それぞれいくつかの種類があります。なお、近年は国内産の木材だけでなく、中国などで生育された海外産が使われることもあります。一般的にそれほど大きな音質や音量の差が現れるわけではないですが、低コストで調達できることから学校教材用などの普及に一役買っています。
木目は、原木からどのように琴の材料を切り取るかで決まります。木取りには、中心から放射状に切り出す柾目(まさめ)の木取りと、同心円状に切り取る板目(いため)の木取りがあります。二つの違いは、縦に平行に揃った木目が甲と磯のどちらかに見えるかです。甲に美しい木目が出た柾目は、音色も低音から高音までほぼ均質であるという特徴があります。柾目はそれなりの樹齢を経た、幹の太い原木からでなければ取ることができません。ただし、琴の音質は木目で決まるわけでなく、むしろ固さや密度などの木質に影響を受けます。固いほど切れのある音質になり、柔らかであれば丸みのある音がでます。熟達してくると曲に応じて使い分けることもあります。