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洋楽の影響を受けた明治期の作曲技法
明治維新により近代国家が成立します。検校や勾当などの階級制度は廃止され、明治以前に作曲された琴の曲は古典(古曲)と称されるようになりました。欧米の生活様式や考え方も輸入されてくると、
琴の世界にも新しい価値観が持ち込まれます。それ以降の曲は明治新曲と呼ばれ、洋楽的な作曲技法もふんだんに取り入れられるようになりました。「巌上の松」「明治松竹梅」「御園の松」などを作曲した、大阪の菊塚与一
の「三(みつ)の景色」では、絃を爪などではじくピチカート奏法が使われています。個の感性を表現する琴 新しいスタイルの探求へその後、「春の海」で知られる宮城道雄が登場すると、一気に洋楽と邦楽のエッセンスの融合や、個人の感性を吹き込んだ近代的作風が切り開かれました。
宮城道雄は16歳のとき「水の変態」を作曲、以後「春の夜」「唐砧」「初鶯」「都踊」「秋の調」など約700曲の作品を残しました。その後、影響を受けた多くの若い琴の作曲家、演奏家がそこから羽ばたいています。戦後、「現代邦楽」と呼ばれる活動が始まり、洋楽系の演奏家にも琴が新鮮な驚きをもって受け止められ、国外に紹介される機会も増えました。高度経済成長期にはお稽古事ブームにより、一般家庭にも普及。
最近では、ジャンルを超えて、琴や三味線といった和楽器をポップスやジャズ、ロックなどの演奏に取り入れるアーティストやグループも注目され、新しいスタイルの音楽を追求する姿勢が好感されています。おもな参考文献
題名 発刊年号 箏のためのハンドブック 1993年 坂本正彦 吉崎克彦、水野利彦 大日本家庭音楽会 ひと目でわかる 日本音楽入門 2003年 田中健二 音楽之友社